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胚培養士さんの未来のために 北里コーポレーションのブログ

こんにちは。北里コーポレーションの内山です。

北里コーポレーションの「北里」という社名の由来は、私たちの本社のある静岡県富士市の北側に富士山がそびえ立っており、大自然への敬意を表しながら、スタート地点を表す言葉として用いています。今回、北里コーポレーションのブログ「KITAZATO BLOG」初投稿となりますので、この新たなる出発にちなんで富士山の写真を掲載しました。

富士山

このブログでは生殖医療の治療現場での情報や知識を中心に、培養士の方々にお役に立てるコンテンツをご紹介していきたいと考えています。

さて、先日私たちは、ガラス化液の凍結融解の新製品の特長や、ラボスタッフの教育に関する内容で、加藤レディスクリニック 研究開発部 江副賢二先生、培養部 伊藤基樹先生に登壇いただき、ライブウェビナーを配信しました。オンデマンド配信を含めると、予想を遥かに上回る視聴や反響を頂き、大変感謝申し上げます。

ウェビナーの中でご紹介できなかった受講者の方々からの質問に対して、講師の先生より回答をいただきましたので、私の経験なども交えながらご紹介します。

卵子凍結の最適なタイミングとは?

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卵子を凍結するタイミングによって、融解後の生存率が影響をうけると考えているのですが、ベストな凍結のタイミングはいつだとお考えですか?
加藤レディスクリニック 研究開発部主任 江副賢二先生
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凍結するタイミングは融解後生存率にも関わっていますが、その後の発生能に大きく影響を及ぼすと報告されています。

当院では基本的にトリガーから34~36時間後に採卵を行い、卵子の成熟を確認次第すぐに凍結しています。採卵からの時間が経ちすぎてしまうとin vitro agingが起こってしまうためです。

また融解後の媒精のタイミングも発生成績に大きく関与します。融解後に細胞質ならびに紡錘体の回復をしっかりと確認してから顕微授精を行うことが望ましいです。

当院では融解後に3時間回復培養を行っています。

 

融解後の卵子の生存率を向上させる3つのポイント

融解後の卵子の生存率を向上させる3つのポイントは下記と考えています。

①ガラス化液に平衡・置換する際の物理的ダメージを軽減する

②ガラス化液への置換が十分であるか確認する

③融解の際の復水が緩慢になるようにする

①に関しては、卵子を胚と同様に平衡させると浸透圧による影響で細胞骨格が大きく変形してしまいますので、卵子用のプロトコールでゆっくりと平衡することが重要になります。

②に関しては、卵子は細胞質が大きい為VSでしっかりと置換する必要があります。浸漬時間が計90秒未満にならないようにしてください。またVS終了時に卵子をWellの底に置き、浮いてこないことを確認する必要があります。

③に関しては、プロトコール通りにTS(Thawing Solution)からDS(Diluent Solution)、DSからWS(Washing Solution)に卵子を移動させる際に前液を持ち込むことを意識する必要があります。
卵子は細胞質が大きく膜にかかるテンションが強い為、ゆっくりと回復させることが重要です。

 

以上、卵子凍結の技術的なポイントをかなり詳細にお示し頂きました。

北里コーポレーションのガラス化凍結融解キットをプロトコール通りに実施して頂けると、江副先生のポイントは全てカバーできると思います。

凍結のタイミング、融解後のICSIのタイミングを可視化する

凍結のベストなタイミング、融解後のICSIのタイミングとして、私は偏光顕微鏡 Polarizing microscopy (ポロスコープ)により紡錘体を可視化することで、卵子のエイジングを極力抑えることが可能であると考えています。

採卵直後であっても紡錘体可視卵子なら凍結できます。また、融解後30分程度の回復培養中であっても紡錘体の回復(可視)が確認できればICSIが可能となります。

スピンドルチェックの重要性とエイジング防止

採卵から凍結、融解からICSIまでの時間を、スピンドルチェックを行うことで極力短くすることにより、エイジングを回避して胚発生の向上が期待できると報告されています。

◇胚発生の向上が期待できる

ご質問は他にも頂いておりますが、また次回、ご紹介したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

卵子/胚ガラス化液 凍結液・融解液

VT525 凍結液

BS (Basic Solution) ×1
ES (Equilibration Solution) ×1
VS (Vitrification Solution) ×2 

VT526 融解液

TS (Thawing Solution) ×2
DS (Diluent Solution) ×1
WS (Washing Solution) ×1

内山 一男

執筆者: 内山 一男

1994年から加藤レディスクリニックで30年近く胚培養士として不妊治療に携わる。 ICSIの受精率90% 以上と当時世界一の技術達成に関わり、さらに安全なICSIを目指すべく卵子紡錘体の可視化と精子形態の厳選化を合わせたSL-IMSIシステムの開発およびルーティン化を実現。 培養士3人でスタートしたラボも60人の巨大なラボに成長し、巣立った培養士が多くの施設で活躍中。 常に新しい技術を適切に確立し取り入れ、累計5万人以上の赤ちゃん誕生に関わり得たことが一番の誇り。